【読書記録】原田マハ「キネマの神様」

 キネマとシネマの違いもわからない私*1ですが、原田マハと映画は大好き。おまけに主人公が独身女性とくれば心惹かれるに違いないでしょうということで日帰り旅行のおともとして購入。新幹線の中でじっくり読みました。ちなみにこれと同時に、ほぼ日手帳ガイドブックも購入しました。来年もカバーは必要ないかな。他人の手書き文字を見ることが好きなので、もっとそこにページを割いてほしい。お願いします糸井さん。

キネマの神様 (文春文庫)

キネマの神様 (文春文庫)

 

 私は原田マハさんの作品を読むと必ず、「ああ人間ってなんて愛らしいんだ」と感じます。私は多くの人々を愛せるような奴ではなく、どちらかというと物事を穿って拗ねてひねくれて見ているため人もなかなか愛せないような奴(そういえばゲッターズ飯田さんのあだ名占いの結果は、ひねくれた天才小学生だった。褒めてるのか褒めてないのか。でもちょっと嬉しい)なんですが、それでもそう思わせてしまうぐらいの力が原田マハにはあるのです。これってすごいことなんです。私が人間を愛らしいなんて、普段の私をよく知る人が聞いたらビックリするでしょう。受付の仕事をしていますが、助けてあげたくなるかわいいおじいちゃんおばあちゃんと、そうではないくそじじいくそばばあに対する対応の差といったらもう。人に愛される力って生きていく上で非常に大事な能力だと思う。自分自身、後者にならないように生きていかねばなりません。

 さ、そんなどうでもいいことは置いといて。

 主人公・歩はアラフォーで映画好きの独身女性。この歩の父親がそりゃあもうダメでダメでダメなハゲ頭親父。ギャンブル、そして借金の繰り返しという典型的なダメ親父。しかしこの親父、心から映画を愛している。そしてその映画の素晴らしさをおもしろおかしな癖になる文章で人に伝えることができる。

 映画を愛する親子が映画を通して新たなスタートを踏み出していくお話。

 

 私、最初に映画が大好きと言いましたが、それほど見ているわけではありません。気になったものだけを見るタイプ。ですので、この作品に出てくる作品も中身どころかタイトルさえ聞いたことがない作品だらけでした。淀川さん*2にもし会ったら、会って間もなく「さよなら、さよなら、さよなら」って言われるレベル。ああ映画もっと見ておけばよかった!見ていたらこの作品をもっともっと楽しめたのに!!あああああああああ!!!!!と叫びたくなるほど。勉強ができないならせめて映画を見ていればよかったのではないか、そうしたら充実した人生を、素敵な大人になれていたのではないかと幻想を抱いてしまう。チャップリンの格好をして「少年、大志を抱く前に映画を見よ!」ってスクリーン指したい感じ。

 片桐はいりさんの解説がこれまたよかったんです。はいりさんってはいりさんが出てくるだけでその作品がワンランク上になるぐらい、素敵な役者さんじゃないですか。そんなはいりさん、文章も上手い!読者はこういう気持ちでこの解説に辿り着いているんだろうなーじゃあこういう風に書けば余韻を壊さないかなーという洞察力がすごい。作品から解説までをすべて読んでも、それとそれの間に邪魔がないというか、流れがとてもキレイなんです。それを無意識にやっていると思います。はいりさんのエッセイを読みたくなりました。

 はいりさんの解説に出てきた

正しい事実より、楽しい作り話

 という言葉がとても印象に残りました。そう思うこと、たまにありますよね。事実はいつだって正義というわけではない。虚構がいつも悪ではない。そんな感じ。

*1:調べてみてわかったけれど、「ふーん」って感じだった。

*2:故・淀川長治さん。この作品にも登場する。ちょうじさんだと思っていた。ながはるさんだった。