【読書記録】村山早紀「桜風堂ものがたり」

 本屋大賞にノミネートされていたのでタイトルは知っており、表紙の絵も素敵だったのでずっと気になっていたのですが買うタイミングを逃していました。そしたらなんとサクラ書店で直筆サイン入り本を見つけてビックリ!迷わず購入した本です。

桜風堂ものがたり

桜風堂ものがたり

 

  万引き事件がきっかけで長年勤めた書店を辞めることになった主人公・一整を中心に、本を、そしてきっとそれ以上に人を愛する書店員がたくさん出てくるお話。この「万引き事件がきっかけで~~」云々を読んだだけで、メンタルが弱まっている人は少し手に取りにくいのではないか?なんて思ってしまうのですが(実際私も心にズシンときそうで、躊躇しました)そんな不安は捨てて、本が好きな人にはぜひ読んでほしい一冊です。

 

 生きていると悲しい経験とか辛い経験が多かれ少なかれありますが、忘れているつもりでいても頭の片隅にはそれが消えずに残っているんだなーとしみじみ。なんかこう、嫌な思い出のはずなのにこの物語を読んでいるとそれが優しくよみがえってくるんですよ。嫌な思い出が優しく、なんて不思議な話なんですけど。あの日、あの時のもうダメだと思っていた私が救われたような、そんな不思議な気持ちになりました。

 そう、この物語、全体的に不思議なんです。現実の世界の話なのに、なんだかふわっとしてるというかファンタジーのようにも思える。その象徴が一整と一緒に旅をすることになるオウムなんですけど、それだけじゃなく、物語全体がふわっとしている。いい意味で、ですよ。私は兄弟から幾度となく「なんだろうなーなんか浮いてるよねー」と言われてますけど、それと真逆のやつですからね。このふわっと感はなんだろうと読んでいる間も読み終わったも数日考えていたんですが、著者の村山早紀さんを調べたときに、児童文学作家という肩書きを見つけて「あーーーなるほど」と納得。言葉では上手く表現できないけれど、それを知ったときにスッキリしたんです。現実の世界にちょうどいい具合の夢が加えられている。その絶妙さが児童文学をやってきた方ならではなんだろうなーと思いました。

 

 「いっせい」の漢字変換といえば「一生」でしたが、これからは「一整」とも変換されるな。羽海野チカ作「3月のライオン」の主人公である桐山零くんといい友達になれると思う。なってほしい。